インボイス制度が始まる前に、確認しておいた方が良い「買い手(支払い)側の対応」

税務署からのお知らせは、登録申請のアナウンスがメインです。

 インボイス制度が来年10月1日から始まるということで、該当する方はインボイス発行事業者の登録の案内が税務署からも届いているかと思います。
 当事務所のお客様も、インボイス制度の概要のアナウンスと、発行事業者の登録を進めておりますが、周りのセミナーや案内を見て、「インボイス発行事業者の登録」は進んで来ていますが、買い手側としての対応はまだ考えられてない方が多いかと思いましたので、今回は、インボイス制度が始まる前に確認しておいた方が良い「買い手側(支払側)の対応」について、お話ししたいと思います。
 なお、インボイス制度の概要とインボイス発行事業者の登録については、YouTube「インボイス制度の仕組み」と「登録をするかどうかの判断ポイント」をご参考ください。

買い手側(支払い側)の影響について。

 例えばですが、当社は以前から消費税の申告をしており、A社から毎月10万円程度の商品を仕入れている。そのA社が「インボイス発行事業者の登録」をするorしない場合で、インボイス制度開始前と開始後でどのような違いが出てくるか見てみましょう。
当社が消費税の計算方法について、届出により「簡易課税」を適用している場合は、消費税の計算は売上等の収入金額を基に計算するので、仕入先・支払先がインボイス発行事業者の登録をしているorしていないの確認は不要です。)

 上の段が、仕入先 A社がインボイス発行事業者の登録をしていなかった場合で、赤字の金額の通り、当社側での消費税の控除金額が3年ごと減り、インボイス開始後6年経つ2029年10月からは、消費税の控除は全く出来なくなってしまいます

 ですので、仕入先・経費等の支払先に、インボイス発行事業者の登録をしなさそうな事業者、つまり、年間の国内売上が1000万円以下で、消費税の課税事業者ではなさそうな事業者に対しては、インボイス発行事業者の登録をするかどうかの意向を確認頂き、取引金額について今まで通りの税込金額にするか、消費税分は上乗せしないのか、もしくは取引金額自体を見直すのか、事前にご相談しておいて頂く方が良いかと思います。

インボイス制度開始による価格交渉について。

 インボイス制度開始による取引価格の交渉については、公正取引委員会でQ&Aが既に公表されているのですが、取引金額の交渉内容については、かなり曖昧な表現になっていました。

免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A 一部抜粋~
・・・免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。
 しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。

 この独占禁止法の問題を踏まえたとしても、仕入先・支払先がインボイス発行事業者の登録をしないといった場合、インボイス制度開始の6年後には、その取引先の消費税の控除が全く出来ないということになってしまうので、まとまった金額の取引、例えばですが年間100万以上払うような仕入先・支払先でインボイス発行事業者の登録をしない意向の事業者とは、当社の消費税納付額に十分に影響があるため、事前に今後の取引について相談して頂く方が良いと思います

 最後に細かい点ですが、1事業年度の課税売上高が5億円超、または、課税売上割合が95パーセント未満の場合は、消費税の計算方法について、「個別対応方式」や「一括比例配分方式」という方法(参考ブログ記事:消費税区分を細かくつけることのメリット)を使うので、上記の図に記載の消費税の控除金額よりも実際の控除額が少なくなることがありますが、おおよそこちらの図のイメージを持って頂ければと思います。

まとめ

 今回の買い手側としての対応をまとめると、①まとまった金額の支払いがある仕入先・支払先に、インボイス発行事業者の登録をするかの確認、②登録をしない場合の今後の取引について事前の相談をしておく、の2点を、インボイス制度の事前準備として、して頂いた方が良いと思っております。
 なお、個別事例のご相談は、税務顧問スポット税務相談セミナーの実施にて対応させて頂きますので、宜しければご利用くださいませ。

 

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