中小法人が「従業員の飲食費」を負担する時の注意点についてまとめてみました。

松本市にある温泉「翔峰」の夕食のデザート

 コロナウィルスの感染人数も落ち着いてきて、飲食費を会社側で負担するという機会が復活し始めているかと思いますが、従業員の方の飲食代を会社側で払った場合、従業員の分だからと全て「厚生費」で計上するという単純な決まりにはなっていません。ですので今回は、どういった場合は「厚生費」の経費計上なのか、それ以外はどんな処理方法があるのかをお伝えしようと思います。
※今回は中小法人(期末の資本金or出資金が1億円以下の法人で、資本金の額or出資金が5億円以上の法人の100%子法人等を除く。)の場合に限り、解説致します。

取引先と一緒に飲食をした場合

 この場合は、「接待交際費」という経費科目を使って、全額経費で計上が可能です。会社の事業のため、取引先との関係を良好にするために使用した経費ですので、役員や従業員の飲食代も含めて、全額経費となります。ただし、中小法人の場合は基本的に1事業年度あたり800万円を超えると、その超える金額は税金を計算する上で費用として認められません

ex)1事業年度で900万円の接待交際費だった場合
  →税金を計算する確定申告書にて、当期純利益から100万円(900万円ー800万円)がプラスされて税金が計算されます。

《参考》国税庁HP:交際費等の範囲と損金不算入額の計算

昼食代を負担した場合

 お昼を食べながらの会議で昼食代を会社が負担した場合には、「会議費」として経費に計上することが出来ます。ただし、特定の役員や従業員のみの飲食代で、昼食が会議に付随したものでないと判断されてしまうと、個人的な経済的利益を受けたと考えられるため「給与課税」という、給与を支払う時と同様に、飲食代を源泉所得税の対象として源泉税を支払う必要が出てきます

 ですので、会議室に持ち込めるようなお弁当等ではなく、特定の役員や従業員で外のお店に昼食を食べに行ってその飲食代を会社が負担したとなると、「会議費」としての経費計上ではなく「給与課税」となる可能性が高いです。

 ちなみにですが、役員や従業員側も飲食代の半分以上を負担しており、1ヶ月あたりの会社の実質負担額が(税抜)3,500円以下の場合は、会社の負担額について「福利厚生費」として計上することが出来ます
ex)500円(税抜)のお弁当を1ヶ月で何日間か食べており、半額を給与天引きで従業員が負担していた。
  →10,000円(500円×20日)-5,000円(10,000×50%)=5,000円>3,500円・・・5,000円が「給与課税」
  →6,500円(500円×13日)-3,250円(6,500×50%)=3,250円≦3,500円・・・会社負担額は「福利厚生費」
《参考》国税庁HP:食事を支給したとき

 なお、取引先との昼食代を負担した場合は、上記の「取引先と一緒に飲食をした場合」に該当しますので、「接待交際費」として経費処理することとなります。

残業や宿日直時の食事代を負担した場合

 残業や宿日直時の食事代は、全額会社負担としても、「福利厚生費」として経費で計上しても良いことになっています。

《参考》国税庁HP:食事を支給したとき

社内の忘年会をした場合

 忘年会や新年会、歓送迎会など、会社の全従業員を対象として実施される会の飲食代は、〈従業員におおむね一律に供与される通常の飲食費〉として、「福利厚生費」で経費計上することが出来ます。

 ただし、飲食をする対象者が会社の従業員全員ではなく、特定の役員や従業員のみの場合には、「接待交際費」か「給与課税」に該当する可能性も出てきます。基本的に「給与課税」とは経済的な利益を受けた場合が該当しますので、会社の業務とは関係なく特定の役員や従業員で飲食をした場合や、家族経営の法人で家族や知人と飲食した場合については、原則、「給与課税」の処理が必要となります。

《参考》国税庁HP:交際費等と福利厚生費との区分

おわりに

 今回お話ししたように「飲食代」と一言で言っても、その飲食を誰としたか、どのようなタイミングでしたか等によって経費の処理方法が変わってきます。個人的な感想として、「給与課税」とならない、1ヶ月当たりの昼食代は(税抜)3,500円が会社負担額の上限というのは、なかなか少ない金額なのではとも思ってしまうのですが、「飲食代」は他の経費と比べて個人的な経済的利益になりやすく、給与として支払った後に使うことが想定されやすい「飲食代」は、税金について細かく決められているのかなと思います。
 個別事例のご相談は、税務顧問スポット税務相談にて対応させて頂きますので、宜しければご利用くださいませ。

■サービスメニュー
・税務顧問
・単発のご相談
・クラウド会計(freee)導入サポート
・セミナー実施、執筆/取材

■メディア
・ホームページ
・YouTube