最終更新日:2022年1月28日

 近年は、個人がインターネット上で物やサービスを簡単に売ることが出来る仕組みになってきていますので、そんなに収入を得ていないつもりでも、実は、確定申告が必要だったという場合もあるかもしれません。どういった要件に該当すると確定申告をしなければならないのか、①副業の収入がそれなりにあった場合や、②新たに事業を始めた場合、③年金や保険金の受取りがあった場合に分けて、それぞれ解説致します。また、確定申告をする必要は無くても、した方が良い場合についても解説致しますので、ご参考ください。 

①副業の収入がそれなりにあった場合

 サラリーマンのような普段は毎月給料をもらい、会社の方で年末調整も終わっている場合で、それ以外に副業で収入を得ていた方は、次のそれぞれの場合に応じて、確定申告をしなければならないと規定されています。
〈1つの会社から給料が支払われた方〉
・給与所得と退職所得以外の所得金額(副業の所得を含む)の合計が、20万円を超える場合。
 例)年末調整済みのA社からの給与収入が500万円、副業で稼いだ所得(売上等の収入から経費を差し引いた金額)が25万円
  ⇒25万円>20万円・・・確定申告は必要!

〈2つ以上の会社から給料が支払われた方〉
・年末調整されていない給与の収入金額と、給与所得と退職所得以外の所得金額(副業の所得を含む)との合計額が20万円を超える人
 例)A社からの年間給与収入500万円(年末調整済み)、副業のB社からの年間給与収入15万円 (副業分は年末調整できない) 、クラウドワークスやココナラ等にて得たサービス代金10万円の所得(売上等の収入から経費を差し引いた金額)を得た場合
 ⇒(年末調整のされていない収入金額)15万円+(給与所得と退職所得以外の所得金額)10万円=25万円>20万円・・・確定申告は必要!
・なお、給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
 例)A社からの年間給与収入100万円(年末調整済み)、副業のB社からの年間給与収入15万円、クラウドワークス等にて得たサービス代金10万円の所得
 ⇒(給与の収入金額の合計額)100万円+15万円=115万円<150万円、10万円≦20万円・・・確定申告は不要

 ちなみにですが、「引っ越しもあって、メルカリで大量に家具とか洋服とか売っちゃったよ~」って方は、一旦落ち着きましょう。家具や衣類等の「生活に通常必要な動産」に該当するものは、所得税の対象外のため、上記の所得に含める必要はありません。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は、「生活に通常必要な動産」には該当せず、上記の所得金額に含めて確定申告が必要or不要の判定をする必要があります。また、例えばですが、ロレックスのような値上がりするようなものの購入・売却を繰り返して利益を得ている場合には、「生活に通常必要な動産」には該当せず、所得税の対象となる可能性が高いので注意が必要です。

《参考》国税庁HP:給与所得者で確定申告が必要な人
    国税庁HP:譲渡所得の対象となる資産と課税方法「所得税の課税されない譲渡所得」

②新たに事業を始めた場合

 給与所得は得ておらず、事業を開始したため収入があった場合は、ざっくりとした所得税の計算を行い納税額が発生すると、確定申告が必要となります。この所得税の計算はどのように行うのかを、下記の具体例も含めて確認してみましょう。なお、事業開始初年度において、年の途中までは給料を得ており、会社を退職して新たに事業を始めた方は、同一年に給与所得と事業所得が生じることになるため、上記の①副業の収入がそれなりにあった場合と、下記の「確定申告は不要でも、確定申告をした方が良い場合」もご参考ください。

 次の計算において残額がある場合は、確定申告が必要です。
 〈計算式〉
 1.各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
 2.課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。
 3.所得税額から、配当控除額を差し引きます。

 例)事業収入(売上や補助金等の収入)100万円、経費(賃料や備品消耗品など事業に使ったもの)30万円、株式の配当12万円があった場合
   ・・・日本国内に本店のある法人からの配当であることを前提とします。
 ⇒1.〈事業所得〉70万円(100万円ー30万円)ー〈所得控除※〉48万円=22万円
    ※48万円は基礎控除の金額です。扶養控除や医療費控除等の所得控除は、年末調整や確定申告で申告を行わないと基本的に反映されません。
 ⇒2.22万円×5%=11,000円
 ⇒3.11,000円ー6,000円(配当控除12万円×5%)=5,000円 残額発生のため、確定申告は必要!

《参考》国税庁HP:確定申告が必要な方
    国税庁HP:基礎控除
    国税庁HP:所得税の税率

③年金や保険金の受取りがあった場合

 年金や保険金を受け取った場合も、基本的には所得税の対象となります。これらを受け取った場合にまず確認することは、1.非課税の対象になるものかどうか、2.所得区分はどれに該当するか、です。

1.非課税の対象となるもの
 ケガや病気・災害等により、身体や資産に損失を受けたこと等から個人が受け取る保険金については、社会的な配慮により、所得税の計算に含めない(非課税)という規定があります。ただし、事業者の店舗や商品が火災で焼失した場合は、焼失した商品の損害保険金は事業収入(売上)として所得税の対象にする必要があります。また、焼失した店舗の損害保険金は店舗の損失額を計算する際に、差し引くことになり、同様に、非課税とされた保険金で補填をした医療費について医療費控除を適用する場合は、医療費の金額から差し引く必要があります。 
 なお、死亡に基づいて支払われる保険金のうち、保険料負担者(契約者)と受取人が異なる場合には、相続税or贈与税の対象となるため、所得税は課税されません。詳細は下記〈参考〉URLの「保険と税」のページ内にある「保険金を受け取ったときの税金」をご覧下さい。

2.所得区分はどれに該当するか
 年金や保険金は、その受取り方法により一時所得or雑所得としてそれぞれ異なる方法で所得金額が計算されます。基本的に、一時金で受け取った場合は一時所得年金のように継続して受け取る場合は雑所得に区分されます。ちなみにですが、業務に関して取得した場合は、事業所得に区分され、それぞれの区分に応じて次の計算式により所得金額が計算されます。

  〈計算式〉
  一時所得の金額:収入金額 ー 収入を得るために支出した金額 ー 特別控除額(50万円を限度)
          ⇒つまり、一時所得に該当する収入が年間50万円以下の場合は、一時所得の金額は0円となります。
          ※実際に確定申告を行う際は、上記の計算した金額に×1/2をした金額で税額が計算されます。
  雑所得の金額 :収入金額 ー 必要経費
  事業所得の金額:収入金額 ー 必要経費

 なお、一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものは、源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係が終了しており、確定申告も不要となるため、受け取られた保険会社に確認するのが良いでしょう。

 上記1.2.を踏まえて所得金額の計算を行い、給与所得がある方は①副業の収入がそれなりにあった場合を、給与所得が無い方は②新たに事業を始めた場合に照らして、確定申告が必要かどうかを判断します。

《参考》国税庁HP:生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
    国税庁HP:保険と税
    国税庁HP:医療費を支払ったとき(医療費控除)

確定申告は不要でも、確定申告をした方が良い場合

 確定申告をする必要は無い方でも、確定申告をした方が良い場合、つまり、確定申告をした方が当年or翌年以降の税金を少なくすることが出来るというケースがあります。主に、下記の3つのケースがそういった可能性がありますので、ご参考ください。

1.不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(建物及び土地等や株式等の金融資産の譲渡は除く。)でマイナスが生じている場合
 〈青色申告の場合(注1)〉
 他の所得と損益通算ができ、それでもマイナスが生じている場合には、翌年以降3年にわたり損失の繰越控除が可能です。
  (注1)青色申告を行うためには、不動産所得・事業所得・山林所得がある人で、事前に期限までに申請書の提出が必要です。
 〈白色申告の場合〉
 他の所得と損益通算が出来ます。

 なお、事業を開始するために年の途中で退職した場合は、同一年内にプラスの給与所得とマイナスの事業所得があることは、開業年度であれば売上よりも経費の方が多いケ-スということで十分あり得ることだと思います。そういった場合は特に、損益通算をして申告を行うと、給料受け取り時に源泉徴収されていた所得税の還付が受けられる可能性があります
  

2.譲渡所得のうち、株式や居住用の不動産の譲渡所得の計算上マイナスが生じている場合
 各所得の金額にてマイナスが生じていても、基本的には上記1.に挙げた所得区分のもの以外は、損益通算や翌年以降への損失の繰越控除は出来ないのですが、上場株式等や居住用の不動産については特例があり、一定の要件を満たすと、一定の所得区分の範囲内で損益通算と翌年以降への損失の繰越控除が可能です。こちらの詳細は、別コラム「上場株式等や居住用不動産の譲渡損があった場合の、損益通算や繰越控除の要件及び計算方法は?」をご参考ください。

3.住宅ローン控除が適用できる場合
 こちらはご存じの方も多いと思いますが、居住用の住宅を購入する場合で借り入れを行った場合は、一定の要件を満たすと、年末時点での借入残高×1%(現時点での適用税率)を、所得税から差し引ける規定です。住宅ローン控除を適用する場合は、初年度は必ず確定申告が必要で、2年目以降はサラリーマンのような給与所得者の場合は年末調整にて住宅ローン控除の適用が可能です。なお、住宅ローン控除を適用すると、居住用の不動産に譲渡所得が生じていた場合の3000万円の特別控除が使えない等、他の特例の適用が制限されることがありますので、詳細は別コラム「住宅ローン控除or3000万円控除」をご参考ください。

【参考】国税庁HP:青色申告制度
    国税庁HP:損益通算
    国税庁HP:中途退職で年末調整を受けていないとき
    国税庁HP:認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

おわりに

 確定申告が必要かどうかは、年間の収入の金額だけでは判断出来ず、どういった種類の収入や所得がそれぞれどのくらいの金額なのかによって判断する必要があります。まずは、どういった収入があるのかご自身で整理して頂くと判断がしやすいと思いますが、個別にご相談したい方については、スポット税務相談にて対応させて頂きますので、是非ご利用ください。また、当事務所では申告書作成サポートという、ある程度ご自身で申告書の作成は出来る(したいと思っている)ものの、疑問点がある方や内容が合っているかチェックして欲しい方、基本的なやり方を教えて欲しい方向けのサービスもございますので、よろしければご利用くださいませ。

■サービスメニュー
・税務顧問
・単発のご相談
・クラウド会計(freee)導入サポート
・セミナー実施、執筆/取材

■メディア
・ホームページ
・YouTube