最終更新日:2022年1月28日

 土地を譲渡した場合に、まず確認しなければいけないことが、どれくらいの利益金額が出ているかということです。利益金額が生じている場合、その金額に対して税金を払うことになりますが、平成21,22年(2009,2010年)に取得していた土地の場合は、一定の要件を満たせば特別控除により、最大で1000万円を利益金額から差し引くことが出来ますので、平成21,22年(2009,2010年)に土地を取得している場合は、要件を満たすかどうかを検討した方が良いでしょう。
 なお、この特別控除の規定が出来た背景としては、2008年のリーマンショック後の不況や不動産取引の減少を受けて規定されたもので、購入時期として土地の価格は現在よりも低い可能性が高く、利益が生じる可能性も高いのではないでしょうか。

利益金額の確認

 まず、利益金額を確認するためには、下記の計算式より求めます。

《計算式》 対価ー(取得費+譲渡費用)= 利益金額

 土地の場合は、家屋などの資産とは違って減価償却はないので、取得費に含まれる代表的なものは下記の通りです。
・買った時の購入金額
・購入時の仲介手数料(土地に対する部分のみ。建物と一括の金額の場合は、合理的な按分が必要)
・登録免許税、登記費用、不動産取得税、印紙税など(業務の用に供する場合を除く)
 ⇒業務の用に供していた土地の場合には、支払った際に経費として計上可能です。
・借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
・建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用

 なお、これらの取得費を計算式に利用する場合には、必ず証憑書類が必要となりますので、金額や内容が記載されている売買契約書や領収書は保管しておくようにしましょう。売買契約書や領収書が無い場合は、個人の所得税の計算上、売った金額の5パーセント相当額を取得費として計算を行わなければならない可能性が高いため、証憑書類の保管は要注意です。

《参考》国税庁HP:取得費となるもの
    国税庁HP:固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
    国税庁HP:(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
    国税庁HP:取得費が分からないとき

1000万円の特別控除の要件

 上記の計算を行い、利益金額が生じている場合で、その土地の取得日が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に取得をした国内にある土地等である場合には、法人と個人それぞれ下記の要件を満たすと最大1000万円(利益金額を限度)を利益金額から差し引くことができます。

《法人の場合》
・法人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に取得をした国内にある土地又は土地の上に存する権利(棚卸資産を除きます。以下「土地等」といいます。)で、取得をした日の翌日から譲渡をした日の属する年の1月1日までの期間が5年を超えるもので、次に掲げるものは除く
 ⇒その法人と特殊の関係のある個人又は法人からの取得
 ⇒合併、分割、贈与、交換、出資又は平成22年9月30日以前に行われた適格事後設立若しくは平成22年10月1日以後に行われる適格現物分配による取得
 ⇒所有権移転外リース取引(注)又は代物弁済による取得
・土地等を使用させることによりその土地等の価値が著しく減少する場合(法人税法施行令第138条第1項(借地権の設定等)に該当するもの)のその使用させる行為を含み、次に掲げるもの除く
 ⇒土地収用法などの規定に基づく収用、買取り、換地処分、権利変換又は買収による譲渡のうち一定のもの
 ⇒特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除等の適用を受ける譲渡(租税特別措置法第65条の3から第65条の5までの規定の適用を受けるもの)
 ⇒交換により取得した資産の圧縮記帳等の適用を受ける譲渡(法人税法第50条第1項又は第5項の規定の適用を受けるもの)
 ⇒適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配による土地等の移転
〔必要な手続き〕
・確定申告書等に損金の額に算入される金額を記載するとともに、その確定申告書等にその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書(別表10(5))を添付することが必要です。

《個人の場合》
・平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること。
・平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。
・親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。
 ⇒特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
・相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。
・譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと。
〔必要な手続き〕
・確定申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、一定の書類(※)を添付することが必要です。
(※) ⇒譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  ⇒土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなどで、譲渡した土地等が平成21年または平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類

《参考》国税庁HP:(法人税)平成21年及び平成22年に取得した長期所有土地等の1,000万円特別控除
    国税庁HP:(所得税)平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除    

おわりに

 特別控除は、特別償却等のような費用計上を早めに行うもの(トータルの年数で考えると費用計上額は同じ)と異なり、利益金額から差し引くことが出来るため、要件を満たす場合は必ず適用したい規定だと思います。法人と個人とで上記の通り要件が多少異なりますので、全ての要件を満たしているか確認することが重要です。ほか、個人の場合で自宅や空き家を譲渡した場合には、一定の要件を満たすことで最高3000万円の特別控除の規定がありますので、別ページ「住宅ローン控除or3000万特別控除」もご参照ください。
 なお、個別のご相談については、税務顧問やスポット税務相談申告書作成サポートにて対応させて頂きますので、是非ご利用ください。

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