役員と従業員では、退職金の計上時期が異なる!?

長野駅前の様子が見えるカフェ

 今回は税金の話しということで、意外と知られていないのではという、「役員と従業員では退職金の計上時期」の考え方が異なるということをお話ししたいと思います。

 退職金を支給すること自体が滅多に無いことなので、単純に「支払った日に退職金として処理する」という扱いにされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。退職金として費用処理する際にはまずは、退職する方が役員か従業員かを確認頂き、次の通り、それぞれの場合ではいつが費用計上日になるのか確認するのが良いでしょう。

【役員の場合】
 役員の退職金の損金算入時期(税金計算上の、費用計上日)は、原則として、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。そして例外として、法人が退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められます。結果として、「退職金/普通預金」のように費用処理を行ったうえで法人税の申告書を作成していれば、例外として費用計上はOKですよ、ということになります。また、原則の扱いでいう「退職金の額が具体的に確定した日」という意味は、取締役会で内定した金額を損金経理により未払金に計上した場合は「具体的に確定した日」とは認められず、損金の額に算入(税金の計算上、費用として処理すること)することも出来ないという意味になります。

 その他、役員の退職金を支給する際の税金上の注意事項としては、「法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは、損金の額に算入されます。」という点です。逆に言うと、適正な額を超える金額は、税金計算上、費用として認められないという意味で、適正な額かどうかの判定は一般的に、直近の役員報酬や勤続年数、功績に照らして判断されます。

《参考》国税庁HP:役員の退職金の損金算入時期

【従業員の場合】
 従業員の退職金の損金算入時期は、上記の役員のような具体的な規定はなく、販売費及び一般管理費等の費用計上時期の原則規定「法人税法基本通達2-2-12」の要件を満たした時点となります。この要件は、次の3つの要件を全て満たした時点ということで、退職金に照らして考えてみましょう。

(1)当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
  ⇒「債務が成立」=退職金規程等により、退職金を支払うことが確定した日
(2)当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
  ⇒「具体的な給付をすべき原因となる事実が発生」=退職という事実が発生した時点
(3)当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
  ⇒「その金額を合理的に算定することができる」=退職金規程等により、金額を算定できる時点

 上記の(1)~(3)で一般的に一番遅い日は、退職日か退職金を支給した日かと思います。退職金規定等により、勤続年数等で退職金の金額が予め決められている場合は、退職日にて(1)~(3)の要件全てを満たせるかと思いますし、規定等が無いこと等から、実際に退職金を支払われるまで退職金の金額が分らないという場合は、退職金を支給した日にて(1)~(3)の要件全てを満たすことになると考えられます。

《参考》国税庁HP:販売費及び一般管理費等

 最後になりましたが、上記のことを知っていると、退職金の費用処理を行う時期はいつにすれば良いかということは、単純に退職金を支払った日ということでは無いということが分かると思います。さらに役員の場合ですと原則と例外があり、それらの日にちが年度をまたぐ場合には、どちらの事業年度で税金上の費用計上をするか選択する余地があるということになります。退職金というと役職や勤続年数により高額になることも多く、費用計上時期がいつかにより税金計算にも影響が大きい費用かと思います。個別のご相談についてはスポット税務相談も承っておりますので、宜しければご利用ください。

最近の出来事

 最近、ブログを書く時は近くのカフェで書く事が多いです。長野もすっかり暖かくなってきたので、気分転換に自転車でカフェに行き、ブログを書くことが最近の楽しみでもあります。このカフェの場所は駅前の様子が良く見える場所なのですが、私が中学生くらいの時にはケンタッキーだった気がします。街の様子も随分と変わりましたが、ここ最近は善光寺で7年に一度の御開帳という儀式が行われているので、まだまだコロナ禍ではありますが人通りは多くなっている気がします。

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