最終更新日:2022年1月28日
会社の取引を円滑に進めるため、または営業の一環として、取引先に対し接待で飲食費を負担したり、手土産やお中元・お歳暮等で何か品物を渡したりすることがあると思います。その場合は交際費として経費計上を行うのですが、主に3つ注意して頂きたい事項があります。
①1事業年度につき800万円までの交際費計上は、期間限定の規定である
期末資本金の額が1億円以下(注1)の法人は、平成26年4月1日以降に開始する事業年度からは、年間800万円まで(注2)交際費の経費計上が認められており、800万円を超える金額は税金計算上、経費金額から除かれます。この800万円までの規定は、我が国の経済の活性化(法人企業の営業活動の促進による収益機会の向上+飲食店営業等の需要の喚起を図る)を目的とした時限立法のため、何年後かには変わる可能性がある制度です。現在は、コロナ禍ということで飲食業界の落ち込みが大きく、この時限立法も令和6年3月31日までは延長する要望が厚生労働省から出ているため、しばらく続くとは思います。
ちなみにですが、平成25年3月31日以前に終了した事業年度においては600万円、平成21年3月31日以前に終了した事業年度においては400万円と金額は異なっていました。
(注1)資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人等の場合は、800万円の限度の規定は適用されません。
(注2) 該当の事業年度が、設立事業年度や事業年度変更により、12ヶ月に満たない場合は、800万円×(該当事業年度月数/12)までが交際費の経費計上限度額となります。
【参考】国税庁HP:交際費等の範囲と損金不算入額の計算
令和4年度税制改正:租税特別措置要望事項(厚生労働省)
②取引先との飲食費の額が、参加者1人につき"5000円以下or5000円超"を区別すること
取引先等との飲食費については、参加者1人の金額が5000円以下と5000円超を補助科目等で区分して仕訳を計上しておく必要があります。次の通り、区分しておく理由はそれぞれ異なります。
〈参加者1人あたり5000円以下を区分する理由〉
参加者1人あたりの金額が5000円以下である取引先との飲食費は、交際費の限度額(800万円の限度額or後述する中小法人以外の限度額)に関係なく、税金上の費用として計上することが出来るため、補助科目等で別に計上しておいた方が良いです。期末資本金の額が1億円以下の800万円の限度が利用できる中小法人にとっては、極端な話、区分している場合としていない場合とでは、次の例のように税金計算上の費用計上額に差が出ます。
例)800万円限度額を利用できる中小法人で、交際費1000万円支出、うち、100万円が参加者1人あたり5000円以下の取引先との飲食費だったとすると、
⇒100万円の飲食費(参加者1人あたり5000円以下)を区分していないと、税務上の費用計上金額は、限度額の800万円
⇒100万円の飲食費(参加者1人あたり5000円以下)を区分していれば、 税務上の費用計上金額は、 900万円(限度額:800万円+5000円以下の飲食費:100万円)
〈参加者1人あたり5000円超を区分する理由〉
こちらの参加者1人あたり5000円超の取引先との飲食費の区分は、 主に、800万円限度額を利用することのできない、中小法人以外の法人(以下、「中小法人以外」と省略)で必要となります。この、中小法人以外については、交際費のうち税金計算上費用に出来るのは、次の計算式で計算した金額です。
計算式:交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(※)×50%
(※)専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。
この、50%を乗じる「交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用」(「接待飲食費」と言います。)を区分しておかないと、中小法人以外の場合は、交際費の金額は税金計算上、全て費用に出来ないということになってしまうため、必ず区分が必要です。なお、中小法人の場合であっても、年間800万円の限度額より、上記の計算式の金額の方が大きい場合は、次の例のように、この計算式による金額が税金計算上費用に出来る金額となります。
例)交際費3000万円、うち、接待飲食費2000万円の場合
⇒2000万円×50%=1000万円>800万円・・・1000万円が税務上の費用計上金額
ちなみにですが、期末資本金の額又は出資金の額が100億円を超える法人は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度からは、交際費等の額の全額が税金計算上、費用に出来ないことになりました。
③相手先や内容を帳簿(仕訳)に記載する必要があること
交際費に限らず全ての経費について言えることですが、経費に計上するということは法人の経営活動に必要な費用であり、その根拠として、「取引日、内容、金額、相手方の氏名または名称」を帳簿(仕訳等)にて明示しておく必要があります。ですので、相手先を記載していないと、それが法人の経費になるものなのかそうでないかの判断が出来ないため、税務調査等の際にはあらぬ疑いをかけられる可能性も否めません。そもそも、プライベート用の費用を法人から支払っているのは会社経営上も問題になってしまいますが、家族経営の法人であると特に気をつけなければならないのが、当たり前ですが、家族や友達とのプライベートでの旅費や食事代は法人の経費にはせず、取引先に対する費用や、友達であっても売上に繋がる費用(友達がお客様で、仕事上の話をするための食事代など)であれば、相手先等の必要事項を仕訳に記載して、法人の経費であることを日々、明らかにしておくことが大切です。相手先等を明記することで何にどれくらいの費用を使っているかも明らかに出来ますので、想定していたよりも使い過ぎてないか、もっと他の費用に使った方が良いか等、今後の経営に生かすことも出来ます。
《参考》国税庁HP:帳簿の記載事項と保存
おわりに
売上をUPさせる・維持するためには、取引先との関係を良好にするためにも交際費は必要な経費だと思います。現行法では、中小法人であれば年間800万円までは税金計算上の費用が認められていますが、時限立法のため、もともとの規定を確認すると、交際費の金額の一部のみしか税金計算上の費用には出来ず、なかなか厳しい規定という印象があります。いずれにせよ、交際費のうち、5000円以下の飲食費かどうかの区分は必ずしておいて頂く、相手先をしっかり明記しておくということは、経費計上をする上で必要なことと思います。
個別のご相談については、税務顧問やスポット税務相談にて対応させて頂きますので、是非ご利用ください。